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11月13日(土)14日(日)「第1回櫛かんざし美術館茶会」開催

第1回櫛かんざし美術館茶会のご報告
11月13日、14日と開催いたしました「茶の文化フォーラム&小澤酒造Presents 第1回櫛かんざし美術館茶会」は無事終えることが出来ました。
ご来場いただきました皆様ありがとうございました。厚く御礼申し上げます。
自宅以外での茶会は1年以上ぶり。櫛かんざし美術館のロビーから眺める絶景の御岳渓谷を眺めながらの立礼席(椅子に座った)でお茶を一服差し上げました。
御岳に移住して4年、青梅・奥多摩の茶道文化を掘り起こし、微力ながら地元の文化振興に少しでも貢献することが出来ればという思いの中で、今回「第1回櫛かんざし美術館茶会」を開催することが出来ましたのも、小澤酒造会長の小澤順一郎さんのご支援の賜物と感謝しております。
皆さんに茶道の面白さを知っていただく機会があればと企画いたしました今回の茶会。お茶とお菓子だけが茶会と思っている方も多く、一般の茶会でも昔のようにお酒が出ることはほぼ無くなりました。正式な茶会では前半の主役がお酒で後半がお茶です。酒と茶の両輪があって茶会は完成します。
そのような思いもあって、今回は搾りたてのお酒、打ち立ての干菓子、碾きたての抹茶と、今ここでしか味わえないものを用意いたしました。
かつて近代茶人の第一人者、高橋箒庵が「東京の茶人はここ奥多摩の水を使うべし」と喝破した名水も、今や使っているのは私だけとなってしまいました。そしてその水系を利用して江戸時代から酒造りをしているのが小澤酒造さんです。
ペアリングの基本は同じ性質のものを使うこと。お酒と肴はもちろ、前半のお酒と後半の抹茶に使う水も然り。同じ水で結ばれているからこそ茶会のペアリングも完成します。流れの中で言われなければ気づかないことでも、知ることで納得、更なる味の奥深さを発見することが出来ます。
今回、小澤さんは3種のお酒をご用意して下さいました。お酒の多様性を知っていただくこともあって、特徴のある、かつ、肴と相性の合うお酒です。1献目は搾りたての「辛口濁り酒」です。生の状態で詰められているので発酵しています。肴は卯の花巾着・ままごとや調進。小澤酒造さんの名水で作られた豆腐も名物なのです。当然、相性も抜群。飲みやすさもあって危険なお酒です。2献目は澤乃井純米銀印を熱燗、64度でお出ししました。肴は湯葉和え。トッピングで胡桃を。同じくままごとや。精米度8割故の旨みを引き出し、湯葉のこく味と相まって、本来ならば紅葉を月を愛でながらゆっくりと味わっていただきたい取り合わせです。
最後の3献目は東京蔵人・純米吟醸酒です。常温でお出ししました。生酛造と言われる自然の乳酸菌を利用した昔ながらの製法で作られています。伝統の力強さを感じさせてくれるお酒です。肴は我が家の畑で栽培している里芋。さらに当地は柚子の産地でもあり、柚子をたっぷり混ぜた白味噌をかけました。里芋の植物繊維は乳酸菌を含む東京蔵人との相性抜群(と私は思っています)。さらに柑橘類と日本酒の相性の良さは、先日私も所属する(一社)日本食文化会議の酒肴部研究会で教えていただいたこと。柚子に負けることのない東京蔵人のコクとキレは、最後の1献に相応しいお酒であったと思います。
後半は象東の三浦和子さんによる打ち立ての干菓子。口の中で溶けていく和三盆は衝撃です。抹茶は碾きたての「大口真神乃白」。厳選された「さみどり」単一品種のここでしか味わえない、自然の香り豊かなお茶です。そして、水は高橋箒庵をはじめ、名だたる数寄者たちを唸らせた名水(小澤酒造の仕込み水でもある)でお茶を点てさせていただきました。
茶碗は、御岳に移住した日本画の巨匠・川合玉堂の次男で陶芸家でもあった川合修二の作。隣の軍畑で窯を構えて作陶に励みました。そして、歴史小説の巨匠、吉川英治の妻である吉川文子による茶杓。吉川英治も当地に移住してきて文筆活動に励み、茶人である文子は度々、自宅で(吉川英治記念館)で茶会を催していました。戦前、かんざし美術館の眼下には仰木魯堂の田舎家茶室玉水庵があり、名だたる茶人たちが集うなど、まさに当地は茶道文化が息づいていたところなのです。
次回は中身をバージョンアップして、前半はお酒と肴と菓子、後半は濃茶・干菓子・薄茶といった流れで、御岳・奥多摩の自然、歴史、文化に根ざした茶会を引き続き開催したいと思っております。一人の力では出来ませんので、皆様のお力添えを切に願っております。また、私で出来ることがあれば何でもいたしますので、お声がけよろしくお願い致します。
そして最後のお客でもあり、私たちを見送ってくれたのはカモシカでした。

壷中庵 宗長 拝